今もなおたくさんの人に愛されるプリンセス物語「シンデレラ」。
1950年に公開され70年以上経った現在も、新しい世代に受け継がれ続け、物語を知らない人はいないほどです。
長年にわたり人々に愛され続ける「シンデレラ」の魅力とは?
「シンデレラ」が制作された時代背景と制作秘話をご紹介します。


【時代背景】スタジオを苦しめた第二次世界大戦
1937年に公開された世界初の長編カラーアニメーション「白雪姫」の輝かしい大成功の後、「ダンボ」「ピノキオ」などを制作したディズニーですが「白雪姫」ほどの興行的な成功は見られませんでした。
それに加え1939年に勃発した第二次世界大戦に伴い、ヨーロッパからの収益が激減したスタジオは次第に厳しい状況下に置かれ始めます。
戦後もアニメーションをいくつか公開しますが、膨れ上がった負債を返済できるほどの成功は収められません。
スタジオには「白雪姫」に匹敵する大ヒット策が必要で、ウォルトは 「白雪姫」作成時と同様に1つの作品に全てをかけることを決めます。
そこで選ばれたのが「白雪姫」と同じく原作があり、すでにたくさんの人に知られている有名なおとぎ話「シンデレラ」でした。
脚本の試行錯誤
実はスタジオにはすでに「シンデレラ」の仮スケッチが存在していました。
一番古いもので1940年1月30日の脚本から1947年に書かれた新しいものまで、様々なアーティストが何年もかけて既存物語へのアプローチ方法を模索していたそうです。
私たちの知っている「シンデレラ」のイメージとはかけ離れていますが、古い絵コンテの中には「感情的になるシンデレラ」も存在したそうです。
様々な試行錯誤が繰り返され、不朽の名作「シンデレラ」の脚本が誕生しました。
たくさんのアニメーションアーティストがディズニー作品において「シンデレラ 」の脚本は未だに最高お手本だと語ります。
その理由は「シンデレラ」は映画を見る前から、誰もが知っている・予想できる結末ですが、素晴らしい脚本と創造力により、常にワクワクと緊張感を保つことができるから。
既存の物語を独自に解釈し、必要なシーン追加することによって、観客を退屈させない技術は、今もなおたくさんのアニメーション作品に受け継がれています。
アニメーションを描くための実写撮影
アニメーション映画の実写化が主流の現代ですが、ウォルト・ディズニーは「シンデレラ」の作成に逆バージョンである実写撮影からアニメーションを作成しています。
不要な時間とコスト削減
実はこの手法は「白雪姫」の作成時も使われていたのですが、実写モデルが衣装を纏い全ての動きを演じて撮影が行われたのは「シンデレラ」が初めてでした。
実写撮影をすることによって事前にストーリーを編集し、不要なシーンの制作に時間やコストをかけないことが目的でした。
白紙からはじめる必要がないこの方法は、当時のアニメーター達がたった半年でアニメーションの下書きを完成させるという驚異のスピードを生み出しました。
アニメーションのリアル感
実写撮影は不要な時間やコストを削減するだけではなく、アニメーションの質の向上にも役立ちました。
実写で撮影した素材を参考資料にすることで、アニメーターたちは人間の細かい動きまで深く研究することができたからです。
またこの実写撮影により、「人間の動きは想像以上に細かく複雑だ」という新たな気づきもありました。
この気づきからアニメーター達は眉毛や口角の位置やその微妙な違いから現れる表情の変化、無意識に行っているであろう重心の動きなどを理解し、より細かな人間の動作や表情を再現できるようになりました。
実際、継母トレメイン夫人のシーンではかなり沢山の実写撮影の素材を使い、少し面白おかしく描かれている継姉アナスタシアとドリゼラのシーンは大まかな所だけ、そして意地悪な飼い猫のルシファーやシンデレラの友達のネズミ達のシーンではほどんど使われなかったようです。
より人間のリアルさを求めるシーンで実写撮影はとても役に立ったのです。
キャラクターの一貫性
約1時間半から2時間ほどある長編アニメーション。
全ての場面を一人のアニメーターが担当することはほとんどありません。
複数人のアニメーターが様々な場面を同時並行に描いていくため、キャラクターの動きに一貫性を持たせるには実写撮影が重宝されました。
どのアニメーター達も素材となるモデルは同じなため、基本的な演技パターンが分かるのだとか。
そのため何人もの手で描かれたシーンごとのキャラクター達も、統一した人物として違和感なく見ることができるのです。
登場人物の魅力
シンデレラ
長年のプリンセスシリーズで見ると、白雪姫とシンデレラ、そして「眠れる森も美女」のプリンセスであるオーロラ姫は同時代で括られます。
しかしシンデレラはこの2人のプリンセスよりも感情の深さが表現されています。
物語のほどんどで優しく勇気のある女性として描かれているシンデレラですが、実は喜怒哀楽の全ての感情が表現されているのです。
冒頭で朝、時計台が鳴ると「時計まで私に仕事をしろと命令する」と苛立ちの表情を見せるシーンがありますが、白雪姫とオーロラ姫に関して「怒り」の感情が登場する場面はありません。
また、継姉のアナスタシアとドリゼラが歌と演奏のレッスンを受けているシーンでは、プリンセスであるはずのシンデレラからちょっとした皮肉のような台詞が発せられます。
このように感情豊かに表現されていることで、シンデレラの心の動きや考えが見ている人にも伝わり、より彼女への共感が生まれるのです。
こちらも他のプリンセスにはないシンデレラの魅力だとアニメーターは語っています。
フェアリー・ゴットマザー
シンデレラに登場するフェアリー・ゴットマザーは、どこかぬけていて可愛らしく親しみやすいおばあさん。
これは今までたくさんのアニメーター達がイメージした妖精の概念を捨てて作り上げた新らしいキャラクターです。
新しい妖精のおばあさんにすることで、シンデレラとの会話の中に面白おかしいユーモアが含まれ、キャラクターの魅了をより引き出すことができたそう。
シンデレラが継姉達に破かれたボロボロのドレスを着ているにもかかわらず、魔法で馬車や馬、御者のみを準備し「早く乗って、時間がないわ」と言ってしまうような落ち着きのないおばあさんの姿はどこか身近に感じますよね。
また、フェアリー・ゴットマザーが魔法を使う時、棒から魔法の粉が出てこず手のひらで棒を数回叩くシーンがあります。
「何かが詰まりそれを出そうと叩く」という動作も日常的に見かけますよね。
このように身近で感じる日常を織り混ぜることで、「魔法使い」という非日常的なファンタジー要素をより自然に感じることができるのだと製作者は語っています。
継母 トレメイン夫人
新しい世代のアニメーター達はディズニー史上最も恐ろしいヴィランズとしてトレメイン夫人をあげるそうです。
魔法が使えるわけでも特別な権力を持っているわけでもない、ただシンデレラの欲しいものを奪うだけの悪役キャラクターは、現実世界のいわゆる「いじめっ子」そのまま。
声を荒げることはなく常に冷静で、シンデレラ以外に自分の力を見せびらかせることもありません。
現代ドラマなどで描かれるいじめっ子の主犯格も冷たく威厳がありますが直接手は汚さない、そんなイメージありますよね。
トレメイン夫人が見ている人に強い感情を呼び起こす要因は、誰しもが感じたことのある怖さを持っていることだ言われているようです。
継姉 アナスタシアとドリゼラ
ディズニーハロウィン時期の仮装で密かに人気を集めるプチヴィランズのアナスタシアとドリゼラ。
冷酷極まりないトレメイン夫人とは対照的にコメディ要素たっぷりに描かれているキャラクターです。
自分勝手、自惚れ屋、横暴、意地悪、がさつという言葉がよく似合い、決して美しい容姿では描かれていない2人ですがなぜか親しみやすく憎めない。
「この2人のキャラクター性がなければ、シンデレラはもっと重たい話になっていたかも。トレメイン夫人のリアルな怖さと絶妙なバランスが取れている」と、製作者は「シンデレラ」における2人の重要性を語っています。
ネズミ達と悪猫ルシファー
シンデレラの強い味方であるネズミのジャックとガス、性格の悪い飼い猫のルシファーの対決も物語でいい味を出しています。
面白おかしい3人のやり合いは大人気アニメーション「トムとジェリー」のようです。
ルシファーはどこか抜けているぽっちゃりなガスを標的とし追いかけ回しますが、頭の切れるリーダージャックにいつもしてやられます。
現実世界ではカーストが上のはずのルシファーがネズミ達に負けているという間抜けさがクスッと笑えるポイントですね。
計算された背景
魔法により美しいドレスになったシンデレラがお城に到着してから王子様と踊るまでのシーン。
物語の中で特に重要なこちらのシーンのメイン背景であるお城の様子は、シンデレラの心の中をよく表すために考えて描かれたそうです。
シンデレラが到着したお城の外観は、人間のサイズにはそぐわないほど高く描かれています。
また、シンデレラが恐る恐る入っていくお城の中の柱は大きく、階段やカーテンは広く長く、全てにおいて違和感があるほど背景のサイズが大きいのです。
このようにおかしいほどに誇張された建物は、場違いなところに来たという自覚のあるシンデレラが感じている不安感や圧迫感を表しているそうです。
不安を抱いていたシンデレラですが、王子様と出会い踊ることで怖さが徐々に消えていきます。
シンデレラの気持ちの変化と共に背景のサイズ感もだんだん慣れ親しんだ大きさに変わっていくのです。
大成功を収めた「シンデレラ」
「白雪姫」以降初めて、スタジオの全勢力をかけて製作された「シンデレラ」は大成功を収め、「大人から子供まで誰もが楽しめる魅力的な作品は国境を超えて愛される」と賞賛されました。
その言葉通り、公開から70年以上たった今でも世界中で愛され続ける作品となりました。
ウォルト・ディズニーにとっても「シンデレラ」は特別な作品になったようで、「最もお気に入りのシーンは?」という質問に対し「シンデレラがドレスを手に入れるシーンかもしれません」と答えたそうです。
戦時中の厳しい時代に「シンデレラ」を通して強力な復活を目指したウォルトは製作者達と共に感動的な作品を生み出し、幸せや希望を持つ大切さを世の中に伝えたのです。
まとめ
以上、「シンデレラ」の製作秘話のご紹介でした。
本記事はディズニ−100周年を記念して開催された「ディズニー100 フィルム・フェスティバル」で販売された「シンデレラ」のパンフレットをもとにしております。
興味深い製作秘話はあったでしょうか?
製作者のこだわりや作品の魅力を知った後に見るとまた違った発見や気づきがあるかもしれませんね。
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お城での生活が始まったシンデレラの様子や継姉アナスタシアの恋が描かれた「シンデレラⅡ」、継母のトレメイン夫人が魔法の杖を手にしシンデレラがガラスの靴を履く前に時間が戻ってしまう「シンデレラⅢ〜戻された時計の針〜」も合わせてご覧いただけます。

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